春掘りのナガイモと自然薯

とろろ 山菜・山野草

春堀りとは

ナガイモ、自然薯の収穫は通常は11月初旬~12月が収穫期ですが、厳しい冬を、土の中で過ごし、休眠から覚めたナガイモ・自然薯を、春に掘り上げる事を言います。

秋から初冬に掘ったものは、みずみずしい味わいがありますが、春に掘ったものは、秋よりも糖度が増し、より旨味が増します。

産地として有名な青森県の長芋の、平均糖度は4~4.5度と言われています。それが春掘りのものは、糖度が上がり甘みを増します。青森県産の春掘りナガイモで売り出されてもいます。

ただし、旬の時期は短いものです。春に芽を出すために蓄積した養分を、次の世代の種芋として、どんどん成長のために利用ためと思われます。

我が家では、ある年に、10月末に初雪が降り、そのまま、根雪になってしまい初冬に収穫できなくなり、雪が溶けてから掘り上げたら甘さが増しているのを実感し、毎年、春掘り用として残しています。

味が良くなること以外に、収穫後の保存に気を使わなくても良いのと、ネズミによる食害がないのが理由です。なぜか今まで、ネズミに土の中にあるナガイモ・自然薯を食べられたことがありません。もっとも、よほどの飢饉であれば別だろうとは思っていますが。

自然薯と山芋の違いは

何よりの違いは、自然薯とヤマイモは交雑しないということです。自然薯の粘りと長さ、ナガイモの水分が多いシャキシャキ感と甘さを融合した、ハイブリッド品種は出来ないということです。

自然薯とナガイモを、お隣同士で栽培しても、自然薯は自然薯、ナガイモはナガイモとして生きているということなんでしょう。まあ、嫌味な言い方をすれば、アンタはアンタの生き方、私は私の生き方をしている、という孤高の人生?芋生?

日本に分布するヤマノイモ科の植物はヤマノイモ属に属しており、ナガイモ、大薯(ダイジョ、ダイショ)ヤマノイモの3種が食用に使われています。

ヤマノイモは、自然薯(ジネンジョ)あるいは、自然に生えると書いて自然生(ジネンジョウ)とも呼ばれ、学名はjaponica、日本原産です。芋の長さが1mから長いもので1.5m位に成長します。

一方、ナガイモは、栽培用として中国大陸から渡来した外来種。と思っていたのだが、必ずしも、そうとは言えないようです。

ナガイモは、日本では中世以降に中国大陸から持ち込まれたとの説もあるが、中華人民共和国にもヤマノイモ科の作物は複数あるものの、本項と同種のナガイモは確認されていない[4]。日本で現在流通しているナガイモは日本発祥である可能性もあり、現状は日本産ナガイモと呼んでいる[4]。
Wikipedia

ナガイモは、自然薯と比べると、水分量が多く粘り気は少なめ。自然薯よりも太く重さもあるが、長さは80~90cmぐらいです。

大薯(ダイショ、ダイジョ)は、「つくね芋」や「大和芋」の呼び名のほう一般的なのかもしれません。粘りの強さが特徴で、形は不規則、握りこぶしのようにゴツゴツしています。

秋田では「山の芋」の名前で販売されています。長芋や自然薯ムカゴは出来ますが、大薯は、ムカゴができません。

自然薯と山芋の歴史

食用としての歴史は米よりも古く、縄文時代の稲作が行われる以前から食されていたと考えられています。

奈良時代に書かれた「古事記」に、野老(トコロ)の名で記載されています。ただし、現在、知られている「ヤマイモ」とは違い、苦みが強く別の品種と見られています。

平安時代には、「今昔物語」に高貴の人々に、正月の宴に芋粥を振舞われていたとの記載があります。江戸時代には、徳川家康が健康食として「とろろ飯」を好んで食したとも言われています。

また、地域によっては、正月の行事として1年の健康祈願ため「三日とろろ」を食べる習慣が残っています。他にも無病息災の願掛けとして、小寒の9日目の1月13日頃「寒九とろろ」など、各地にトロロにまつわる風習が残っています。

松尾芭蕉は、駿河の丸子宿場から江戸に出立する弟子に、次のような俳句を残しています。
「梅若菜 鞠子の宿の とろろ汁」

十返舎 一九は「東海道中膝栗毛」の中で「とろろ汁」を食べようと店に入った所、店の中での夫婦喧嘩のおかげで食べそこなってしまったという話を書いています。

長いも、自然薯の1年物、5年物、10年物

3年物だとか、時に10年物の自然薯という言葉を聞くことがありますが、間違ってはいませんが、正確ではありません。

ナガイモも自然薯も、ヤマノイモ科の、多年生蔓草であり1年芋。その成長過程は、ムカゴが種となり芋へと成長します。

ムカゴとは、ナガイモや自然薯のつるになる肉芽の事で、蔓の葉のつけ根にできる実のことです。漢字だと「零余子」。この辺だと「イモゴ」という呼び名になります。

そのムカゴが1年経つと、大きいものだと30cmほどの一本物になり、それが種芋となり1本物の芋になる。を毎年繰り返します。年数を重ねれば重ねるほど、大きくなるというものではありません。

その年の気象条件等により、親芋より小さいものができた、ということもあります。

すりおろした時に変色する原因

変色するのは、ポリフェノールが原因です。また、粘りの成分である「ムチン」もまた変色の原因とも言われています。

ムチン動物の粘液の主成分とのことです。長芋のネバネバ成分は、マンナンという多糖類とたんぱく質が結合して作られた糖たんぱくで胃の粘膜を保護し、消化・吸収を助けてくれるそうです。

茶色に変色したからと言って、味や風味が変わるわけではありません。とは言え、やはり抵抗感は感じます。では何故、ナガイモや自然薯の色が、すりおろすと変わるのか?

その原因として考えられることが2つあります。

1.葉や蔓が枯れる前に収穫した。
2.蔓と茎の部分が取れてしまった。

1つ目の理由。自然薯や長いもは、完全に枯れた状態にならないと、すりおろした時に変色しやすくなります。栽培農家であれば知っていて当然の知識です。それでも、早く出荷することにより、早くに収入を得たいという思いがある、のだろうと推測しています。

青森県では、出荷元であるJAでも注意喚起しているとのことですが、わざわざ、そういう通達を出しているのは、中には、それを無視して出荷する農家もいるということなのでしょう。

収穫時期が11月から12月は、雪が降ってくる季節でもあります。かつて10月末に初雪が降り、そのまま根雪になったという年もありました。

雪の降る時期が近づくと晴れる日も限られてきます。雨でグチャグチャの畑の中での作業は、するのも嫌なものですが、作業効率も極端に悪くなります。

なにより、畑の中に病気を持ち込む可能性も高くなります。

とはいえ、ルール破りを擁護する気持ちはサラサラありません。「正直者が馬鹿を見る」では、正直者は浮かばれません。

まっ、結局は、ズルしたところで、自分で自分を首を絞めることにはなるんですがね。

ふたつめとして、蔓と茎の部分が取れてしまうことによって、芋の成長が妨げられる。蔓と茎とは簡単に取れてしまいます。風であったり、除草の際とか、気付かぬまま触ってしまい、ポロリっと離れてしまうものなのです。こちらの場合は、不可抗力といったところでしょうか。

切り口が茶色になっているものは、すりおろすと変色する可能性が高くなります。

真空パックには注意

スーパーなどの食品売り場で、真空パックになったナガイモをみることが多くなりました。ナガイモは、もろく壊れやすいので、それを防ぐために真空パックにしている、と考えたほうが良いでしょう。

ナガイモ、自然薯も呼吸しています。保存期間が長くなったり、気温が高くなると炭酸ガスを出します。真空パックでは炭酸ガスが逃げないため、酸っぱい匂いがしたり、食べるとピリピリした刺激があったりすることもあります。

真空パックの保存期間は、2週間ほどと言われています。

袋から出し新聞紙に、くるんで冷暗所または冷蔵保存しましょう。とはいってますが、一番のお薦めは、旬のものを旬の時期に、サッサと食べてしまうことです。

コメント

  1. 池田剛士 より:

    「ムチン」と呼ぶのは誤用です!!
    是正のためこのような活動をしています。よろしければご協力ください。
    https://mobile.twitter.com/acsec_inc

    #公共メディアじゃんぬ
    #訂正報道の専門メディア

    ご参考になれば幸いです。

    (速報)JAグループ[一般社団法人家の光協会] より お詫びと訂正(2023/03/27) – 公共メディアじゃんぬ –
    ムチンは動物から分泌される粘性物質である…
    http://ienohikari.net/news/2023/002742.html

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    一般社団法人農山漁村文化協会 よりお詫びと訂正(2023/2/6):
    ムチンは胃液のような動物粘液に含まれ、動物界だけに存在するものであり、植物やキノコ類には見出されていないことが確認されています。
    https://ruralnet.or.jp/oshirase/toshokoushin.html

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    茨城県庁 よりお詫びと訂正(2023/05/22):
    以下のとおり訂正してお詫びいたします。

    (誤)レンコンに含まれるポリフェノール、ムチン、タンニンは、

    (正)レンコンに含まれるポリフェノール、タンニンは、
    https://pref.ibaraki.jp/bugai/koho/kenmin/hibari/backnumber/2014-02.html

    #公共メディアじゃんぬ
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    徳島県庁よりお詫びと訂正:
    ※ レンコンに含まれる成分を「ムチン」と述べましたが、令和2年7月30日の食品工業辞典の用語解説の訂正において、「ムチン」は「動物より分泌される粘質物一般をいう」と整理されました。
    https://pref.tokushima.lg.jp/governor/press-record/5004611/

    #公共メディアじゃんぬ
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    福島県広報課 よりお詫びと訂正(2023年4月1日):
    なめこにはムチンが含まれておりませんでした。お詫びして訂正させていただきます。
    https://pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/560689.pdf

    #公共メディアじゃんぬ
    #訂正報道の専門メディア

  2. 池田剛士 より:

    ご協力ありがとうございました。

    (訂正報道)日本放送協会 よりお詫びと訂正(2024/02/16):
    2023年7月28日および今年1月12日に放送した「なんでウナギはヌルヌルしている?」の内容に一部誤りがありました。
    なめこ、オクラ、山芋などのヌルヌルした成分は、ムチンと呼ばれるたんぱく質だとお伝えしましたが、ムチンとは異なる成分でした。
    かつては、植物性のヌルヌルした成分もムチンと呼んでいたこともありましたが、現在では、ムチンとは、動物性のヌルヌルした成分だけを指す、ということです。

    チコちゃんに叱られる!
    ▽紙テープの謎▽冷やかしとは▽なぜ指揮棒を振る
    初回放送日: 2024年2月16日

    https://www.nhk.jp/p/chicochan/ts/R12Z9955V3/
    https://www.nhk.jp/p/chicochan/ts/R12Z9955V3/episode/te/K8KJ6NVJ6W/
    [画像] https://jeanne.jp/nhk_2024.2.18.png

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