はたはた!激動の変遷と愛すべき県民魚

はたはt 食べ物

ハタハタ料理

ハタハタの塩焼き

ぶりこハタハタの塩焼き
      ぶりこハタハタの塩焼き

ハタハタに軽く塩を振り、炭火で焼く。

ブリコは熱を加えると噛んだ瞬間「プチプチ」という、近くにいる人に聞こえるほどの音がする。噛みごたえというか食感というか、聴覚に訴える他では味わえない独特の音と味がする。

それ故、子供たちの中には、「ブリコだけ食べれば、ハタハタの身はいらない」という子もいるほど、ブリコの人気は高い。

オスの「白子」も、トロリとして捨てがたいものがあるのだが、「白子ハタハタは・・・」と、首を横に振る人が多いのも事実。特に女性陣には不人気のようである。(自分調べ)

田楽

素焼きにした「はたはた」に、味噌にクルミと少量の砂糖を加えた「クルミみそ」で食べる。ただ焼くだけではあるが、「生はたはた」となると、そう簡単には焼けない。なかなかに時間のかかる料理でもある。

子供の頃、近所の家の玄関先に、大きな囲炉裏が置いてあり、串刺しにしたハタハタが、いろり火を囲むように何本も幾重にも刺さっているのを見た記憶がある。その囲炉裏は、暖を取るというより、夏には川魚を焼くためだったりと季節を問わず、使われていた囲炉裏だった。

が、間違いなく、絶対に食べているはずだが、食べたという記憶はない。ただ美味そうだったな、という記憶だけが残っている。

ハタハタ鍋

しょっつる鍋
提供 男鹿なび

ハタハタの鍋物といえば、しょっつる鍋。

となるところだが、しょっつるを使うには、ハードルが高い。しょっつるは、ハタハタを原料とした魚醤であるが、昔は、各家々で作っていたのだが、今では作る人も少なくなり、出来合いを購入することで本物のしょっつる鍋ができる。

白醤油を使うと、しょっつる汁に近い雰囲気を楽しめる。

味付けは、味噌か、醤油、白醤油、あとは「しょっつる」。ネット上のハタハタのレシピを見ると、「生姜を入れる」とあるが。新鮮なものには必要がない。生姜を入れることによって、折角のハタハタが生姜で台無しになってしまう。くどいようだが「新鮮なもの」はである。

「はたはた」は、味がタンパクであるため、小味噌煮風に、濃い目の味付けにするのがポイント。醤油味も同じ。他の具材としては、ネギ。あとは豆腐ぐらいのものか。ハタハタとネギだけで十分。余計なものをゴチャゴチャと入れないほうが、はたはたの味を楽しめる。

「はたはた」は、身が柔らかく、煮崩れしやすい。以前、知り合いの家に行ったら、3歳の孫が大張り切りで、鍋の中をかき回したもんだから、バラバラになってしまって「怒るにも、怒れないし・・」とぼやいていた、なんてこともあった。

ハタハタこうじ漬け

漬け床に並べたハタハタ
      漬け床に並べたハタハタ

季節ハタハタの漁期は11月後半から12月にかけて、箱買いしてくる。まず米を炊き、炊きあがった熱いご飯に麹を入れ砂糖を加え漬け床を作る。

麹と砂糖で発酵が始まり、時間が経つと濃いめの甘酒のようになる。こうなると、漬け上がりが早くなる。作りたての硬いままでも問題はない。

ハタハタは、大きめの漬物袋に入れ、強めの塩を振って、1晩から1昼夜置く。これを「赤つゆ」を上げるという。この工程を省くと生臭さが残ってしまう。

浸透圧によって、薄い血の色をした水分が外で出てくる。赤つゆを捨て、ハタハタを水で洗い水分を拭き取り、漬け床に入れる。この漬け床は、他の魚でも代用可能。

あとは、時の経つのを待つだけ。正月近くが食べ頃になる。発酵によって、頭もそのまま食べられるほどに柔らかくなる。漬け上がったハタハタは、焼くというより炙る。すぐに真っ黒に焼け焦げてしまうので注意が必要。ハタハタは火を通すと驚くほど小さくなってしまう。頭が大きく身が小さいので1人で、数匹はペロリと食べられる。

ハタハタの未来

ハタハタが最盛期の昭和の頃は、何箱も買いだめしていたため、「はたはた」オンリーの食生活となる。「はたはた」だけではないが、焼き魚は、焼きたてだと旨いが、冷めると生臭さを感じる。子供の頃、弁当のおかずが、毎日毎日「はたはた」では、さすがに飽きがきて参ってしまった。

しかしハタハタは、その後すぐに庶民魚から高級魚へと変身を遂げる。簡単に「ハタハタ1箱ください」とは言えなくなってしまったのだ。

今では、スーパーの魚売り場に、北陸産とか北海道産が、県内産と一緒に並べられている。その中で北海道産の「はたはた」を始めてみた時は、 その巨大さに度肝を抜かれた。

県内産の、 ゆうに倍はある。いや、ちょっと小ぶりの「はたはた」だったら、三匹分はありそうなものだ。値段も大きさに相応のものではあるが 。ただ何となく、色も形も、少し県産のものとは違うような感じがするのだが。

かつて、ハタハタの不漁が続いたおりに、北朝鮮からハタハタを輸入したことがあった。ところが、ハタハタの腹の中に小石を詰め、重量をかさ増ししていた。という事件が起こり、連日、県内で報道された、ということも付しておこう。

不漁が続いた昭和60年代のこと、知り合いの料亭のオヤジさんが、「いくら、お客さんの要望とはいえ、とうとう、ハタハタをお膳に出すことになった。ちょっと前までは、考えられなかったのに・・・・」と苦笑いをしていたことを思い出した。なまじ庶民魚だったことを知ってるだけに、料理人としてのプライドが、許せなかったのかもしれない。

それが、今では高級食材に化けてしまったのも、時代の変遷ということかもしれない。

ただ、ハタハタの漁獲量は、すでに述べたように、一旦、回復傾向にあったものの、再び急激な減少へと向かっている。 子供の頃は、飽きてしまって、もう沢山と思っていたこともあったが、下記の漁獲量推移棒グラフを見ていると、再び、復活できるのか!ハタハタの未来は?

ハタハタ漁獲量推移表
ハタハタ漁獲量推移 秋田県における漁獲量と漁獲金額の推移(秋田県水産振興センター)  https://www.pref.akita.lg.jp / uploads /public