はたはた!激動の変遷と愛すべき県民魚

はたはt 食べ物

はたはた

箱単位で買う魚、それが「はたはた」である。冬の保存食として、数箱もしくは十数箱のハタハタを、各家庭で買い求めることは、極々普通の光景であった。

お腹に、ブリコを抱えたメスのはたはた
お腹に、ブリコを抱えたメスのはたはた

今はフタ付きの発砲スチロール箱であるが、昭和の時代は木箱であった。その木箱が魚屋の店頭に、何十箱も積まれていた。そして、ただ1種類の魚を、何十匹、何百匹単位で売り買いされていたことに、誰も違和感を持っていなかった。

ハタハタは、秋田の「県の魚」である。

なお「県の花」はフキノトウ。「県の木」は秋田杉。「県の鳥」はヤマドリである。

ヤマドリ
ヤマドリ

今年も、うちの近くで「ケーンケーン」と聞こえる鳴き声が聞こえてくる。ヤマドリなのかキジなのか?おな

めったに姿を見ることもない。2、3度見ただけの記憶なので、どちらとも、断定できない。

このヤマドリやキジの鳴き声を「ほろ打ち」と呼ぶらしい。「母衣(ほろ)」とは武士の鎧や兜の後ろにつける、布の旗のような武具のことだという。

ハタハタの漁場、最盛期は?

沿岸漁場は県、北部(岩館-能代)、男鹿北部(北浦-古賀)、男鹿南部(船川-脇本)県南部(道川-象潟)の4地区である。

昭和41年(1966年)の漁獲量2万607トンが記録に残る最盛期である。しかし、平成25年(2012年)からは減少傾向にあり、令和3年(2019年) では、284トン。昭和41年(1966年)の最盛期に比べ、ほんの1.4%に過ぎない。だからといって、単に右肩下がりに減少してきたわけではない。

平成7年(1995年)から令和3年(2021年)までの28年間の漁獲量のみを抜粋した推移表。

ハタハタ漁獲量推移 秋田県における漁獲量と漁獲金額の推移
ハタハタ漁獲量推移 秋田県における漁獲量と漁獲金額の推移 (秋田県水産振興センター)https://www.pref.akita.lg.jp / uploads /public

平成4年(1992年)からは3年間自主禁漁となり、解禁後は、乱獲を避け、漁獲枠を設けたりして対策を講じてきた。その結果なのか、平成7年(1995年)143トンから徐々に漁獲量が上昇し平成16年(2004年)には、3,055トンのピークを迎える。しかし、その後は坂道を転がるが如く、令和3年(2021年)の、284トンまで漁獲量が減少してしまった。

平成16年(2004年)の3,055トンの数字が大きく見えるが、昭和41年(1966年)の漁獲量2万607トンの、7分の1、約15%に過ぎない。昭和の時代、いかに大量のハタハタが捕れ、消費されていたのかが分かる。昭和40年代では、加工用より家庭での消費が大半であった。加工業者が少なかったのもあるが、しょっつる、ハタハタ寿司などの加工は、各家庭で、普通に行われていたためである。

漁獲量推移を見ていると、ここ数十年の間で、大漁、不漁の変動差が、いかに激しかったのかが分かる。平成28年からは、1,000トンを下回り、減少傾向が続いている。前述した通り、漁業関係者は、決して、ただ手をこまねいていたわけではない、のだが・・・

ハタハタは不味い魚?

獲りたて新鮮なはたはた
        獲りたて新鮮なはたはた

「はたはた」は、かつては「秋田の人間意外は食べない」と言われていた。それは、ハタハタは鱗を持たず、外見が、蛇のように見えるから、という話を聞いたことが ある。

確かにハタハタには「うろこ」がない。そして新鮮なものほどギラギラと銀色に輝く。不気味と思っても不思議はない。しかし、この輝きこそが新鮮さの証でもある。ハタハタは足の早い魚であり、時間が経つと赤みを帯び、輝きも徐々に失われていく。

朝鮮半島においてハタハタは下魚であり、猫またぎとまで言われた魚であったという。

むかし、むかし、朝鮮の王朝においてクーデターが起こり、都を捨て海岸線まで逃れた。王様は空腹に絶えかね、 地元の漁師に食べ物を無心したところ、「あいにく、これしかありません」といって出したのがハタハタ。

ところが、空腹であったにも関わらず、王様は、あまりの不味さに口から出してしまった。というの伝説があるというのを、ラジオか何かで聞いた覚えがある。

では、「秋田の人間意外は食べない」と言われたハタハタが、なぜ、秋田で好まれたのだろうか。

ハタハタは回遊魚であり秋田県沿岸のホンダワラ類藻場に11月下旬から12月に産卵のため海岸沿いによって来る。この産卵時期のハタハタが、いわゆる「季節ハタハタ」。この時が一番旨い。いわゆる旬の時期である。そして旬の時期は短い。

秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会ブログ » 秋田の旬な魚~季節ハタハタ~

例えるならば、春の山菜やタケノコようなもの、と考えれば分かり易いのかもしれない。御存知の通り、タケノコは竹の若芽。タイミングを逃してしまうと、あっという間に竹になってしまい、食材にはならない。このように、旬の時期は短い。

ハタハタもまた、この旬の時期の短さが「秋田の人間意外は食べない」と言われた由縁なのでだろう。

ぶりこ

季節ハタハタといったら「ぶりこ」。メスのおなかに入っている魚卵。魚の卵としては、大きい部類に入る。

ふぐやタラなどは、白子(しらこ)のあるオスが珍重されるが、「ぶりこハタハタ」は、メスの方が圧倒的に高値で取引され。大漁の時には、魚市場でメス1箱買えば肥料袋に入ったオスだけのハタハタが無料で付録で付いてきた、それも2袋も3袋もという、話もあった。

冬の風物詩と言えばハタハタ釣り!

産卵のために巨大な群れをつくって沿岸の浅場にやってくるハタハタを狙う。

エサ不要のサビキ「カエシ(針の先のトゲ状の部分)のない針」にオモリのみのシンプルな仕掛けで、ハタハタの群れの中に投入すれば、ハリ掛かりしてくる。専用の「ハタハタ仕掛け」も売っている。

ハタハタは産卵が本格化する夜間を狙う釣り人が多い。何度か夜釣りに誘われたことがあるが、真冬の夜中、時に雪混じりの寒風の中の釣りと考えると…行ったことは、ない。知り合いの大工さん、暇つぶしに、日中、ハタハタ釣りに出掛けたら、運が良かったのか、そこそこ釣れたと喜んでおりました。

ただし、海岸に打ち上げられたブリコを採捕することは秋田県漁業調整規則で禁止されており、 違反すれば6カ月以下の懲役あるいは10万円以下の罰金が科せられます。

はたはた卵の採捕等の禁止について
(はたはた卵の採捕の禁止)
 第37条 放産したはたはた卵は、これを採捕してはならない。
(所持又は販売の禁止)
 第38条 前3条の規程に違反して採捕した水産動物又はその製品は、所持し、又は販売してはならない。
(罰則)
 第56条 次の各号の1に該当するものは、6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。