幻の山菜!行者にんにく

食用のニラ、カンゾウ、行者にんにくの比較写真。山菜の見分け方。 山菜・山野草
左からニラ、中央がカンゾウ、右が行者にんにく。どれも食用だが、素人目には見分けが難しいものもある。確実な判別は、やはり「匂い」が一番頼りになる。
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幻の山菜、行者にんにくとは?

雪国にとって春の訪れの感じ方は、人それぞれだろうが、吹いてくる風で冬から春への変化を感じる。それまでの、直線的で痛みを感じるような冬の風に比べ、柔らかでウェーブのかかったような春の風。そして、春の匂い。

そんな中、我が家で一番に芽を出す山菜が、ギョウジャニンニクです。

自生する行者にんにくは日本では北海道から本州の近畿地方(奈良県)にかけて分布するそうです。

大きさの違う2本の行者にんにくの新芽。小さい株も成長すれば大人になります。
葉が1枚の若い株(左)と、葉が2枚の充実した株(右)。小さくとも、これらは立派な「大人」の株です。年数を経るごとに葉の数が増えていきます。

行者にんにく、名前の由来

行者にんにくという名前の由来は、山にこもる修験道の行者が荒行の合間に強壮のために食べていたからとも、逆に滋養が付きすぎて修行にならないため、食べることを禁じられたからとも言われています。

漢字で書くと、行者大蒜、行者忍辱、行者葫。
別名:キトビロ、ヤマビル、ウシビル、エゾネギ、ヤマニンニク、エイザンニンニクなど。北海道では、「アイヌネギ」と呼ぶことがある。

行者にんにくの特徴

根元が赤い行者にんにくの若芽4本。特徴がわかる接写写真。
行者にんにくは地際の茎が赤いのが最大の特徴。匂いだけでなく、この色も重要な見分けのポイントです。

ニラのように光沢のある葉と、根本の茎のはかま部分が赤いのが特徴。そして、ニンニクのような強い香りがあります。

種子は20 – 25度が発芽適温で、気温10度では発芽が難しく30度になると発芽しないなど、生育環境が限定されます。

土から顔を出したばかりの若い行者にんにく3本。成長途中の様子。
成長の遅い行者にんにく。葉が1枚だけのものもあれば、2枚以上になった「大人」の株も混在している。

ギョウジャニンニクは成長が非常に遅く、種を蒔いてから2年目の春にようやく芽を出します。それも、頼りなげな細い茎に葉は1枚だけ。

土から芽吹いた大小2本の行者にんにく。成長段階の違いがわかる。
葉が1枚(左)と2枚(右)の株。小さく見えるものでも、すでに数年分の成長を遂げた「大人」たちです。

3年目から4年目になって葉が2枚以上となり、5年目あたりでようやく茎が伸びて花が咲き種がつき始めます。花が咲くまで7年懸かるとも言われています。

開花期は、6 – 7月ごろ、長い茎を出して白色または淡紫色の小さな花をつけ、ネギ坊主のような形をしています。その後、黒色の球形の種となります。


行者にんにくの採取方法

収穫時期は4月~5月頃。 葉っぱが垂れてしまう前の、柔らかい若葉の頃に収穫します。

年代物の行者にんにく
年代物の行者にんにく

根元から2~3cm茎を残して採ります。茎を残して、翌年の収穫に備えます。
行者ニンニクは、1か所の葉鞘から年数を経るごとに、葉の数が増えていきます。葉っぱが1枚のものは、株がまだまだ充実していないので、採取してしまうとそのまま枯れてしまうこともあります。

2枚以上になったものを採取するようにします。ただ、行者ニンニクは成長が遅いので、すべて採ってしまうと、株が急激に弱ってしまったり、翌年に1つも収穫できないということがあります。

そうならないよう、ある程度は、採取可能な葉も残しておきます。

行者にんにくの栽培法

ギョウジャニンニクの増やし方は、種からと株分けの方法があります。

植え替えたばかりの行者にんにく
無事に根付いてくれることを願って、行者にんにくの苗を植え替えました。収穫できるまでには数年かかりますが、春の味覚を自宅で楽しめる日が待ち遠しいです。

株分けの場合、行者にんにくを、春か秋になったら一度掘り起こし、根元から株を分けて植え直します。株分けの方法は、根を切らないように掘り上げ、親株の周りの新しい茎を手で割って、分けて植えます。

種は、花が咲き終わり、種の殻が割れるのを待ってから採取します。ただし、種からの栽培は、ことのほか難しいものです。

群生して元気に育っている行者にんにくの畑
ご覧の通り、密植気味の方が元気よく育ちます。天然に近い形で育てている我が家の様子です。

ギョウジャニンニクは、密植したほうが元気よく育つため、株間は5~10cmとやや狭めにして植えつけ、最後にたっぷりと水を与えます。

我が家では、株分けしたものを林の中に植えつけ、天然に近いかたちで育てています。俗に、植えっぱなしともいいますが。

行者にんにくの栄養

行者にんにくの独特の強い匂いには、多くの薬理成分が含まれているとされています。

アリシン

ギョウジャニンニクには、ニンニクよりも多いアリシンが含まれます。アリシンは、ニンニク由来の化合物で、にんにくや、ねぎなど香りの強い野菜に含まれている香気成分です。

また強い殺菌作用があり、免疫力を高め、がんの予防にも効果があると言われています。更に、血行促進により、冷え性や動脈効果、血栓の予防にも効果的とされています。

生のニンニクを煮たり炒めたりした時の臭いの元となる物質でもあります。

β-カロテン

ギョウジャニンニクの葉の部分にはβ-カロテンが多く含まれます。β-カロテンが多い食品は、にんじん、ほうれん草、かぼちゃなどの緑黄色野菜や、かんきつ類、スイカなどの果物です。

抗発ガン作用や免疫賦活作用で知られています。喉や肺など呼吸器系統を守る働きがあるといわれています。

ビタミンK

ギョウジャニンニクに含まれるビタミンKの量は、生鮮食品の中でもトップクラスです。ビタミンK が多い食品は、海藻、しそやモロヘイヤなどの緑黄色野菜に多く含まれています。

ビタミンKは、出血した時に血液を固めて止血する因子を活性化します。また、骨の健康維持にも不可欠で、骨にあるたんぱく質を活性化し、骨の形成をうながすことも知られています。

行者にんにくの食べ方

根元が赤紫色の行者にんにく(アイヌネギ)の若葉
春の訪れを告げる「山菜の王様」、行者にんにく(アイヌネギ)です。独特の香りとシャキシャキとした食感は、おひたしや炒め物、ジンギスカンとの相性も抜群です。

天然物のは、幻の山菜と言われていますが、ギョウジャニンニクは1月頃から、ハウス栽培物が出始めます。

生の行者にんにくに味噌をつけて食べる。もろキュウならぬ、もろギョウか?この食べ方が1番と言う人も多い。

行者にんにくの天ぷら

山菜料理といえば、まずは、天ぷらですかね。サクサク衣の食感と、シャキシャキとした行者にんにく特有の香りが鼻から抜けて、ほんのりと爽やかな風味も感じられます。

行者にんにくのおひたし

はかまをとって塩少々を加えた熱湯でサッとゆでて水気をしぼります。独特の香りには上品な味わいがあり、おひたしにするとおいしく食べられます。

行者にんにく味噌

行者にんにくを、流水で洗い水気を切ったら、好みの長さに切ります。
フライパンに、味噌、みりんを入れ、加熱して弱火で煮詰めます。行者にんにくを加え、好みの固さになるまで煮詰め、粗熱が取れたら、煮沸消毒した保存ビンに入れて保存します。

行者にんにくの醤油漬け

行者にんにくの醤油漬け
滋養強壮や疲労回復に効果があるとされるアリシンを豊富に含む、栄養満点の一品。家庭でも簡単に作ることができ、春の恵みを閉じ込めた自家製保存食は格別です。

醤油漬けは生のままだと、漬けあがるまで時間はかかりますが、こちらのほうが、よりギョウジャニンニクの風味を楽しめます。

行者にんにくを、熱湯でサッとゆでて水気をしぼり、醤油の中に漬け込みまず。切る長さは、お好みで良いでしょう。1本ものの方が贅沢さを味わえますが、刻んで漬ける方法もあります。

他には、行者ニンニクたっぷりの餃子とか、行者にんにくの肉巻き、行者にんにくと豚肉のオイスター炒め、鶏肉と行者にんにくの塩炒めなど、食肉との相性もいいので、いろいろと楽しめると思います。


食べると命に関わる!野草の罠

ギョウジャニンニクと、間違えて誤食されるものに、イヌサフラン、スズラン、バイケイソウなどがあります。どれも毒草とされていて食べると非常に危険な野草です。

イヌサフラン

地面から伸びる、幅広く艶のある緑色のイヌサフラン(コルチカム)の葉の群生
観賞用として親しまれていますが、絶対に食べないでください。食用植物との区別が難しい場合は、絶対に採取したり、食べたりしないことが重要です。

春になると20~30cmほどの葉を伸ばしますが、葉は夏になると枯れ、秋にピンク色の花をつけます。花が咲くときには葉はありません。曼珠沙華(彼岸花)と生育がよく似ています。

イヌサフランの種子や球根に含まれる有毒成分は、植物全体に「コルヒチン」という猛毒を含んでいます。コルヒチンを過剰摂取すると、急性中毒症状として、咽頭灼熱感、発熱、嘔吐、下痢、背部疼痛などが現れます。重篤な場合には死亡することがあります。この毒は、加熱調理しても変わりません。また、解毒剤はありません。

美しい薄紫色のコルチカム(イヌサフラン)の花が咲き誇る様子
可憐なイヌサフラン。全草、特に球根には猛毒のコルヒチンが含まれており、山菜のギョウジャニンニクなどと間違えて食べてしまう食中毒事故が毎年発生しています。観賞用としては魅力的ですが、取り扱いには十分な注意が必要です。
2019年4月、群馬県において、知人から受け取った野草(イヌサフラン)をギョウジャニンニクと思って食べたことにより、食中毒が発生しました。2人が食べ、2人とも発症し、うち1人が死亡しました。また、6月には秋田県において、自宅敷地内に生えていたイヌサフランをウルイと間違えて採取して食べたことにより、食中毒が発生しました。1人が食べ、発症し、死亡しました。
神奈川県衛生研究所有毒植物イヌサフランによる食中毒について
  • 2019年4月 群馬県: 知人から受け取った野草をギョウジャニンニクと思って食べたことにより、食中毒が発生。2人が食べ、うち1人が死亡。
    出典:神奈川県衛生研究所 イヌサフランによる食中毒について
  • 2019年6月 秋田県: 自宅敷地内に生えていたイヌサフランをウルイと間違えて採取・喫食し、死亡。
  • 2022年4月 茨城県: 庭のイヌサフランを誤食し1名死亡。
    出典:消費者庁 野草の誤食に注意

スズラン

スズラン

ユリ科の植物で、別名を君影草。ギョウジャニンニクと似ている有毒植物です。実だけでなく花にも葉にも全草に毒は含まれています。

スズランの葉が開いた状態でしか見たことがないと、勘違いしようがないような気もするが、地力のない痩せた土地のスズランは、葉が大きく広がらず、細いままだと見間違うのかもしれない。そんな、スズランを見たことがある。

中毒症状として、嘔吐、頭痛、眩暈、心不全、血圧低下、心臓麻痺などの症状を起こし、重症の場合は死に至ります。その有毒成分はコンバラトキシン等で、強心作用や血液凝固作用があり、多量に摂取すると心不全の状態になります。

  • 2011年5月 岩手県: 山林で採取したものを「行者にんにく」と思い込み、家族3名が喫食し全員が中毒。
  • 2022年4月 北海道: 直売所で購入した行者にんにくにスズランが混入。購入者が搬送。
    出典:消費者庁 ニュースリリース

バイケイソウ

オオバギボウシ(地方名ウルイ)

バイケイソウの新芽は、オオバギボウシ(地方名ウルイ)やギョウジャニンニクと似ており、極めて中毒事故が多い。新芽も葉も茎も根もすべて有毒で、毒性の強いアルカロイドを含みます。

中毒症状は、吐き気、嘔吐、手足のしびれ、呼吸困難、脱力感、めまい、痙攣、血圧低下など。重症の場合は意識不明となり死亡する。茹でる、炒める、天ぷらにするなど熱を加えても毒成分は分解されず中毒を起こします。

毒草であるバイケイソウには不快な苦みがあるといいます。

  • 2016年5月 新潟県: 飲食店が採取したバイケイソウを「行者にんにく」として客に提供。11名が発症。
    出典:新潟県 食中毒発生事例
  • 2025年4月 長野県: 直売所で「ウルイ」として販売されていたものの中にバイケイソウが混入。購入者2名が救急搬送。
    出典:食品安全委員会 事例速報

確かな判別方法は「匂い」

行者にんにくと、他の山野草との一番の違いは『匂い』です。生のままでも、ニンニクのような匂いがします。まずは、他の山菜採取でもいえることですが、匂いで判断できる山菜も多いことを知っておくべきです。

何よりは、山野草の中には、死に至る猛毒を持つものがたくさんあります。調べても判断がつかなかったら、絶対に食べたり、人にあげたりしてはいけません。「生兵法は知らぬに劣る」の格言、肝に銘じるべきです。